ポンミのエンタメ備忘録ブログ

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よみがえる変態

よみがえる変態 星野源著 読書メモ

ミュージシャン・俳優・文筆家の星野源のエッセイ。
2011年からの3年を綴った内容。

感想(ネタバレあり)

心から励まされる本。
星野さんのことは大人計画の舞台を観に行って知ったけれど、正直あまり注目していなくて
いつの間にか歌を聴いたり、テレビで見かけるようになり、いつの間にかとってもメジャーな存在になっていたという印象。
出演ドラマや映画はちょこちょこ見ていたけれど、2012年にくも膜下出血になっていたことを知らなかった。
この本の半分以上は通常のエッセイ、後半はくも膜下出血からの出来事が綴られている。
星野源さんという人は、自分の気持ちに素直で、努力家で、優しい人だということがこの本を読むとひしひしと感じる。
そして「自分の好きなものを表現したい」という強い信念を持った人間だということがわかる。

”「一部の人だけ聴いてくれればいい」なんてつまらないことは死んでも言わない。「どんな方法でもいいから売れたい」なんて恥ずかしいことは死んでも思わない。
自分が面白いと思ったことを満足いくまで探りながら、できるだけたくさんの人に聴いてもらえるように努力する。
それが我が地獄における、真っ当な生きる道だ。生きるとは、自分の限界を超え続けることであり、生きるとは、死ぬまで諦めないことである。”

わかる人にわかればいい、なんて逃げである。手段を選ばず売りに走るのは、作り手として意味がない。
自分が良いと思うものを追求して、それを1人でも多くの人に共感してもらえるように努力する。
自分の仕事にも、いつもこんなプライドを持っていたいと思った。企業努力の神髄のような気がする。
何かの名言集に入れて欲しいぐらい、感動する文章だった。

そしてくも膜下出血になった時のこと、手術のこと、術後のこと、再発のこと、また手術・術後のことが綴られている。
神様は乗り越えられる試練しか与えないとよく言うが、この人ほど当てはまる人はいないだろう。
星野さんのユーモラスな文体を持っても、どれほど辛かったか伝わり、ユーモラスであるからこそ涙が出てくる。

”死ぬことよりも、生きようとすることの方が圧倒的に苦しいんだ。生きるということ自体が、苦痛と苦悩にまみれたけもの道を
強制的に歩く行為なのだ。だから死は、一生懸命生きた人に与えられるご褒美なんじゃないか。そのタイミングは他人に決められるものではない。
自分で決めるべきだ。俺は最後の最後まであがいてあがききって、最高の気分でエンドロールを観てやるぞと思った。”

涙が出た。でも勇気や元気が湧く。自分も思いっきり生きてやろうと思う。
確かに生きていることはつらい。悩んだり落ち込んだり、イライラしたり不安になったり。
そうか、ここは元々地獄なんだ。

”生きた実感や証というものは、その人の外的行動の多さに比例するのではなく、胸の中にある心の振り子の振り幅の大きさに比例するのだ。”

入院中に感じたことを星野さんはこう表現している。
病院の中は静かで変わらないように見えて、忙しく心は動いている。少しずつ少しずつ、いつもの自分を取り戻していく間に感じる感動。

自分は健康で生きていながら、無駄に過ごしてはいなかっただろうか?
日々いろんなことを感じ、モノづくり地獄に苦しみ、どこまでも自分のやりたいことを追求していく星野さんの生き方に
心を打たれた一冊だった。
そして辛いことがあったとき、この本を開いて、笑って泣いてまた生きる勇気をもらえると思うので
一生そばに置いておきたい本になった。
最後のエッセイと、あとがきも本当に最高。

星★★★★★+無限大!!

よみがえる変態 (文春文庫)

よみがえる変態 (文春文庫)

  • 作者:源, 星野
  • 発売日: 2019/09/03
  • メディア: 文庫

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